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大相撲力士群像 見どころ紹介1

2020年10月31日 11時23分

必死の形相、迫真の表現

 スポーツ競技であるとともに、国技といわれ、日本の伝統文化である相撲。その起源は、神話の時代までさかのぼります。奈良・平安時代には、 宮廷の年中行事として相撲節が催され、力士たちがルールに従って闘う相撲の原型成立。鎌倉時代から安土桃山時代にかけては、武士の鍛錬の一つとして相撲が奨励され、大規模な相撲大会も催されました。室町時代になると職業力士による相撲興行が行われるようになり、江戸時代に幕府公認の勧進相撲が始まると、相撲は歌舞伎や吉原と並ぶ庶民の三大娯楽の一つとして人気を博し、現在に至る大相撲の形が完成しました。

 本展は、いにしえより脈々と続く相撲の歴史を振り返るとともに、時代を彩ったヒーローとしての力士像に焦点を当てるものです。会場では江戸の人気浮世絵師による相撲錦絵をはじめ、現代を代表する力士たちの化粧まわしや太刀、衣装など、多彩な資料を通して相撲文化の醍醐味をご堪能いただけます。

 安本亀八の「相撲生人形」(1890年)は、最古の相撲試合とされる「日本書紀」にある野見宿禰と当麻蹴速の力比べを題材にした作品です。野見宿禰は、出雲国の人で、垂仁天皇の命により、当時最強を誇った当麻蹴速と対戦し、勝利したといいます。これは宿禰が蹴速を投げ飛ばそうとしている場面です。筋骨隆々の肉体に浮き出た血管、目は血走り、歯を食いしばった必死の形相、生々しいまでの迫真の表現が目を引きます。

 生人形は、幕末から明治にかけて見せ物興業に出された細工物の一つで、まるで生きているかのような写実的な表現が世間を驚かせました。作者の安本亀八は、当時各地で興業を行って、人気を博した熊本出身の人形師です。この作品は、明治期にアメリカ人収集家の手に渡り、長年デトロイト美術館のコレクションとなっていましたが、2005年に亀八の郷里・熊本に戻り、現在、熊本市現代美術館が収蔵しています。(県立歴史博物館主幹学芸員吉田浩太郎)

 ▽観覧料は一般510円、高校生・大学生310円。中学生以下と土曜の高校生の観覧は無料。